熊に出会ったら死んだふりは本当に有効なの?

熊に出会ったら死んだふりは本当に有効なの?

最近、クマのニュースが怖すぎて、クマが出る地域に行くのがちょっと嫌になってきました(笑)。いや、本当に怖くて。そこで気になったのが、昔からよく聞く「クマに出会ったら死んだふり」。あれって、本当に有効なの? 調べてみた結果、出会っただけならNG。襲われてしまったときに、首と頭を守る姿勢としてなら意味がある、というのが答えでした。

今すすめられているのは、首と頭を守る「防御姿勢」

宮城県・三重県の案内:襲われたら、うつ伏せで首の後ろを守る

宮城県は、ツキノワグマに襲われたら地面に腹ばいになり、両手で首の後ろをガードして首や頭を守るように、と呼びかけています。三重県の案内も、近くの建物や車に避難できないときは、首の後ろで両手を組んで、うつ伏せになる防御姿勢。

なるほど。要するに、死んだふりをしたらクマがこちらを無視してくれる、というわけじゃない。クマの攻撃を最大限防ぐための、やむを得ない姿勢なんですね。死んだふりでクマの攻撃する気をそぐのではなく、単に、身を守るための姿勢。

クマの死んだふりの正体は、首と頭を守る伏せ方

しかも、これはあくまで「襲われてしまったとき」の話。案内を読んでいくと、その手前の、出会っただけの段階では、やることがまったく別でした。

出会っただけなら、大声を出さずに静かに離れる

出会ったら、後ろを見せずに後ずさり。そこまでは知っていました。でも、クマの目を見ていいんだろうか? あと、大声を出すのはどうなんだろう? 叫びながら後ずさりとか。むしろ、叫びながらクマに向かっていく動画を見たこともあって、そのときのクマは、その様子に圧倒されたように逃げていったんですよね。

三重県・林野庁の案内:大声を出さず、目を離さずに、静かに後退

三重県は、クマに出会ったら「大声を出さない!背中を見せない!走って逃げない!」「目を離さずに、ゆっくりと後退!」と呼びかけています。林野庁も、静かに語りかけながら後退するなど、落ち着いて距離をとるように、と案内。アメリカ国立公園局は、まっすぐ目を合わせるのは避けるように(挑戦的なしぐさに見えることがあるため)、としています。

答えは、大声は出さない。目は、クマから離さないけど、にらみ合わない。そのくらいの感じでしょうか。動画のように叫びながら向かっていくのは、案内とは正反対の動きでした。

クマに出会ったら静かに後退、襲ってきたら建物や車へ、逃げ場がなければうつ伏せで守る

つまり、出会ったら静かに後ずさり、襲ってきたら近くの建物や車へ、それもできなければ伏せる。死んだふり(伏せる姿勢)は、いちばん最後の手だったわけです。

「動かないものは食べない」は俗説だった

北海道の約80年分の新聞から:死んだふりで助かるのは五分五分

ノンフィクション作家の中山茂大さんによると、「ヒグマに遭ったら死んだ真似をすると助かる」は、「クマは動かない物は食わない」という、これも俗説から来た言い伝え。専門家によれば、助かる確率は五分五分で、助かってもけがを負うことが多いそうです。

なるほど。じゃあ、死んだふりが有効というのは、世界共通の俗説なんだろうか? そう思って、海外の案内も見てみました。

アメリカでは、クマの種類で対応を分けている

アメリカ国立公園局は、ヒグマ(グリズリー)が身を守るために襲ってきたら「死んだふり」。うつ伏せで、手と腕で頭と首を覆い、リュックは背負ったまま。アメリカクロクマなら、死んだふりはせず全力で反撃。日本のツキノワグマは、アメリカクロクマとは別の種類です。

答えは、世界共通の俗説ではなく、アメリカでは、ヒグマ相手の正式な案内でした。しかもその形は、日本の防御姿勢とほぼ同じ。効くとされているのは、首と頭を守る形のほう。「動かなければ食べられない」は、クマが言ったわけではなかった。

アメリカ国立公園局の案内:グリズリーには死んだふり、アメリカクロクマには全力で反撃

ちなみに、わたしが見た日本の案内は、ツキノワグマに襲われたら伏せて首と頭を守る、でそろっていました。アメリカの「クロクマには反撃」を、そのまま当てはめる話ではなさそうです。

伏せたら、顔を上げないこと

秋田大学の医師らの研究:防御姿勢で重症化を防げていた

秋田大学医学部附属病院の医師らが、県内で過去最悪の70人が被害にあった2023年度の事例を調べ、うつ伏せなどの防御姿勢をとった人は重症化を防げていた、とまとめました。一方で、顔を上げてしまって追い打ちを受けた人もいたそうです。

顔を見ると、ここが弱点だとクマに分かってしまうから、そこをしつこく攻撃するのかな? うつ伏せじゃない状態だと、お腹も見えていますし。そういえば、クマはお腹をしつこく狙うという話を聞いたことがあるし、顔もそうか。ということは、後ずさりするときも、やっぱり目は見ないほうがいいんだろうか?

林野庁:クマは顔と頭を狙うことが多い

クマは顔面・頭部を攻撃することが多いため、両腕で顔や頭を覆い、すぐにうつ伏せになることが大事だそうです。長野県飯山市の広報も、腹ばいになって、お腹・首・頭の急所を守る防御姿勢を紹介していました。

お腹の話は、伏せればお腹も守れるという形で答えがありました。いちばん狙われやすいのは、顔と頭のほう。後ずさりのときの目は、さっきの「離さないけど、にらみ合わない」でよさそうです。

クマに襲われたときの伏せ方の要点

だから、伏せたら顔を上げない。せっかくの防御姿勢も、顔を上げたら台なし、ということみたいです。

そもそも、クマに出会わないために

林野庁の案内:音で、人がいることを知らせる

林野庁の呼びかけは、単独行動を避け、鈴やラジオなど音の出るもので、人がいることを知らせること。見通しの悪い場所では、手前で立ち止まって大きな声を出すなどで、安全を確かめることも。

いや、本当にその通り。大声の出番は、出会う前だったんですね。死んだふりの出番は、来ないのがいちばん!