自転車でイヤホンをつけて走ると違反になる?

自転車でイヤホンをつけて音楽を聴くのは違反なのか、それとも大丈夫なのか。

多くの人が「なんとなく危ないらしい」と思いながらも、確信を持てずにいるのではないでしょうか。

実は、この問題は想像より複雑で、ただ単に「違反です」とは言い切れない微妙なラインが存在するのです。

道路交通法という全国ルールと、各都道府県の独自ルール、そして「安全」という目に見えない基準が絡み合っているからです。

では、実際のところはどうなっているのか、その実態を調べてみました

1. 国の法律では直接は禁止されていないってホント?

意外かもしれませんが、これまで道路交通法という全国共通のルールには、自転車でイヤホンを使うことを直接的に禁止する条項がありませんでした。

ただし2024年11月1日に道路交通法が改正され、イヤホン装着での自転車運転が法律による違反行為として正式に追加されています。

では何が問題なのかというと、道路交通法第70条に定められた「安全運転の義務」という原則に関わるという点です。

この安全運転の義務は、運転者が道路や交通の状況に応じて、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならないとするもの。

つまり、イヤホン使用そのものより「安全に運転できているか」が焦点になります。

2. では都道府県はどう決めているの?

各都道府県が独自に条例や規則を定めており、東京都、北海道、大阪府、京都府、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県など、主要な都道府県のほとんどが自転車でのイヤホン使用を禁止しています。

東京都の場合、東京都道路交通規則で、周囲の音が聞こえない状態でのイヤホン使用が禁止されています。

主な都道府県の禁止規定は、

・東京都道路交通規則第8条5号
・神奈川県道路交通法施行細則第11条5号
・大阪府道路交通規則第13条5号
・北海道道路交通法施行細則第12条6号

これらの禁止は「大音量」や「イヤホンをつけて音楽を聴く」という形式よりも、「周囲の音が聞こえるか」という実質を基準にしています。

警察が取り締まる時は、警察官の声掛けに反応するか、イヤホンの形状や音量から周囲の音が聞こえるか判断するといった具体的な確認をします

3. 片耳イヤホンや骨伝導ならセーフ?

ここからが微妙なラインです。

警察庁が2025年9月に公開した「自転車ルールブック」によると、片耳イヤホンや骨伝導イヤホン、オープンイヤー型イヤホンの場合、「周囲の音が聞こえる限りにおいて違反にならない」という条件が明記されています。

つまり「形態」ではなく「実際に音が聞こえるか」という機能面が判断の分かれ目になるということです。

ただし、骨伝導の場合でも大音量で使用すれば、結果的に周囲の音が聞こえない状態になれば違反になる可能性があります。

形式が骨伝導だからセーフという単純な判断はできないわけです。

警察庁の公式判断基準

片耳イヤホン、骨伝導イヤホン、オープンイヤー型イヤホンについては、「周囲の音が聞こえる限りにおいて違反にならない」と公式に定められています。

ただし、判断は現場の警察官に委ねられるため、どの程度の音量なら聞こえるとみなされるかは曖昧な部分が残ります。

4. 違反だったら罰則はどうなるの?

周囲の音が聞こえない状態での運転は、安全運転義務違反として扱われ、現在のところ5万円以下の罰金が定められています。

注目すべき変化があります。令和8年4月1日、つまり2026年4月1日から、自転車の危険運転に関する新しい制度が始まる見通しです

この新制度では、青切符という新しい取り締まり方法が導入され、イヤホン使用による安全運転義務違反が対象となる見通しです。

これは警察官がその場で反則金を徴収するシステムで、より手軽な取り締まり方法になるということです。

警察庁公開資料によると、イヤホン装着での運転は5,000円の反則金の対象となると示されています。

なお、スマートフォンの画面を注視するながら運転は反則金12,000円で別の違反です。

5. 結局、自転車でイヤホンしてもいいの?

法的には「周囲の音が聞こえれば使用可能」という線引きですが、実際のところはグレーゾーンが大きいというのが実情です。

警察の判断基準は「警察官の声掛けに反応するか」「周囲の音が聞こえているか」という現場判断になるため、同じ使い方でも警察官によって判断が分かれる可能性があります。

より安全で安心という観点からは、自転車に乗っているときはイヤホンを外すか、聞こえる音量に抑えるのが無難です。

特に来年4月からの新制度導入を考えると、違反になるリスクを避ける選択肢として、イヤホン使用そのものを控えるという判断も増えるかもしれません。

まとめ

自転車でイヤホンをつけて走ると違反になるのか。

結論は、「絶対に違反」ではないが、「違反になる可能性が高い」というのが実際のところです。

2024年11月1日の改正で法律上の違反行為として正式に追加されており、各都道府県の条例や安全運転の義務により、実質的には禁止状態になっています。

形式ではなく「安全に運転できているか」が判断基準であり、片耳イヤホンや骨伝導でも周囲の音が聞こえなければ違反です。

2026年4月からは新しい取り締まり制度が始まるため、今後はより厳しくなる傾向が予想されます。

知ってるようで知らなかった、この微妙なラインを理解することで、より安全な自転車利用ができるようになるはずです!