売上2.2億円突破!ちいかわが中国で大人気な理由

可愛いキャラクターがまさかの大ブレイク! 日本発の人気キャラクター「ちいかわ」が、中国市場でなんと2.2億円もの売上を短期間で記録して話題になっています。

中国の若者たちが長蛇の列を作ってグッズを買い求める光景は、まさに社会現象と言えるでしょう。

でも、なぜちいかわがこれほどまでに中国で愛されるようになったのでしょうか

その背景には、SNSでの爆発的拡散と現地企業との巧妙な戦略、そして中国の若者たちの心に響く独特な世界観がありました。

詳しく調べてみました!

中国でのちいかわブームはどこから始まったの?

ちいかわの中国進出は、実はアニメ配信がきっかけでした。

2023年末頃から中国のアニメファンの間で人気に火がつき、動画サイト「Bilibili(ビリビリ)」やSNS「抖音(Douyin)」では公式アカウントのフォロワーがわずか4か月で約100万人も急増したと報告されています。

この爆発的な人気拡大の背景には、中国の若者たちがちいかわのキャラクターに強い共感を覚えたことがあります。

見た目はふわふわで可愛いのに、現実の社会を映したような労働や試験、友情の物語が織り込まれており、多くの若者が「自分を重ねた」と感じたからです。

さらに興味深いのは、キャラクターに中国語の愛称が付けられたことです。

ちいかわは「吉伊」、ハチワレは「小八」という具合に現地ファンに親しまれており、これは文化の壁を越えて受け入れられた証拠と言えるでしょう。

名創優品との提携がなぜ成功の鍵となったの?

ちいかわが中国で商業的に大成功を収めた最大の要因は、大手雑貨チェーン「名創優品(MINISO)」との戦略的パートナーシップでした。

名創優品がちいかわの版権を正式取得し、中国市場向けに独自企画の商品を開発・販売できるようになったのです。

この提携によって、グッズの価格が劇的に下がりました。

それまで600元以上していた手のひらサイズのフィギュアも、公式ルートなら50元台で買えるようになったため、ファンが手に取りやすくなったのです。

2024年3月末に上海市内の大型ショッピングモールにオープンした期間限定店では、開店からわずか10時間で268万元(約5000万円強)もの売上を記録しました。

ファンが前日から簡易椅子や毛布を持参して徹夜で行列を作るほどの盛況ぶりで、初日から3日間の売上は合計800万元(約1億7600万円)に達したと報告されています。

中国の若者はなぜちいかわにこれほど夢中になるの?

ちいかわが中国の若者の心を掴んだ理由は、その独特な世界観にあります。

悩みのない童話の世界ではなく、報酬を得るための労働や資格試験、友情や試練など現実世界の様子を反映しており、多くの若者たちの共感を呼んだのです。

現在の中国では、大企業のリストラが多く、大都市でも30代で失業者になる若者が増えているという厳しい現実があります。

また、受験競争の激化や少子高齢化といった社会問題も深刻化しています。

こうした状況下で、ちいかわの可笑しくも悲しく、憐れさや儚さを感じさせるキャラクターたちに共感しながら、魅力的なデザインと世界観が醸し出す”かわいさ”に癒やしを求める若者が増えているのです。

中国メディアでも「若者の心の痛み止め」と表現されるほど、ちいかわは現代中国の若者にとって重要な存在となっています。

景気減速で就職難が深刻化し、過当競争で消耗戦に陥ることを意味する「内巻」が流行語となるなか、かわいらしいキャラクターにストレス解消や癒やしを求める「情緒消費」が脚光を浴びているのです。

ちいかわの中国成功が示すキャラクタービジネスの可能性

ちいかわの中国での大成功は、デジタルからリアルまで多面的な戦略を講じた結果です。

SNSでファンコミュニティを育てつつ、現地企業と組んで確実に収益化し、限定イベントで熱狂を演出して口コミを拡大する——まさにキャラクタービジネスのお手本のような展開となりました。

実際に関連商品の売上高は瞬く間に1000万元(約2億2000万円)の大台を突破し、2024年に中国で売れた知的財産(IP)でトップ10に入る人気となっています。

ファッションブランドのGUやユニクロ、小売ではローソンやケンタッキーなど、多彩な企業がちいかわとのコラボレーションを展開し、中国の消費者の日常生活のあちこちにちいかわの姿が見られるようになりました。

この成功は、シンプルだからこそストレートに刺さる”かわいい”の癒やしが、今まさに中国の人々に必要とされていることを示しています。

国境や文化を超越する「かわいい」の普遍的な魅力と、現代社会を生きる若者たちの共通する悩みや願いが見事にマッチした結果と言えるでしょう。