『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の興行収入が、100億円を超えたというニュース! それを見たとき、原作者のナガノ先生には、これでいくら入るんだろう?と、ふと思いました。
映画化の原作使用料が少なすぎて、作家さんの側から不満が出ている、という話を何度か耳にしていたからです。
結論、ナガノ先生にいくら入ったのかは、どこにも公表されていません! ただ、186.6億円の分け方と、原作者にお金が入るしくみは、かなり見えてきました。
じゃあ、ネットで見かける「年収10億円」って何なの? ナガノ先生も、ほかの原作者と同じしくみなの?
ナガノ先生に入る金額は、公表されている?
まったく見当がつかなかったので、まずは公式サイトやニュースに、数字が出ていないかを探してみました。
ナガノ先生に入る金額は、見つからなかった
映画の公式サイトにも、ニュースにも、ナガノ先生にいくら入ったかの数字は無し(2026年の11月ごろの時点)。
やっぱり、公表はされていませんでした。本人が自分から話さない限り、外からは分からないってことなのかな。分からないなら、お金の流れのしくみから考えるしかありません。

とはいえ、ネットで「ナガノ先生 年収」と探すと、数字はいくらでも出てきます。その出どころを、たどってみました。
ネットの年収は、仮の率をかけた計算だった
数字は800万円から50億円まで、サイトによって桁がちがう。印税10%・グッズの取り分1%などを仮に決めた計算で、もとは知恵袋・まとめサイト・Xの話。計算したサイトも、年収は公表されていないと書いている。
みんな、仮の数字をかけて計算していただけ。桁がそろわないのは、だれも本当の数字を知らないから。とはいえ、公表されていない以上、発行部数や興行収入から推し量るしかないのも分かります。わたしがここからやるのも、同じことですし。
186.6億円は、どこにどう分けられる?
次は、186.6億円そのもの。映画のお金がどう分けられているのか、わたしは全然知りませんでした。何パーセントとか、決まりがあるのかな?
国の資料では、映画館50%・配給5〜15%・製作者35〜45%
経済産業省の研究会の資料(2025年1月)にある、一般的な分け方(もとは、みずほ総研の調べ)。製作者は、多くは製作委員会のこと。186.6億円(2026年11月1日現在)に当てはめると、映画館に約93.3億円、配給会社に約9.3〜28.0億円、製作者に約65.3〜84.0億円。あくまで目安。(経済産業省・興行通信社)
まず半分は、映画館。そして、この分け方のどこにも、原作者の名前は出てこない。だとすると、製作委員会の中の取り分が問題なのかな? 出版社なんかも、ここに入っていそうな気がします。

製作委員会には、出版社が入ることもある
映画会社・放送事業者・出版社・広告代理店などが入り、もうけは主に出資した割合で分ける。(公正取引委員会の報告書・2025年12月)
じゃあ、映画ちいかわは? わたしは、ナガノ先生が製作委員会のメインなんじゃないかと思っていました。
映画ちいかわのまとめ役は、QTORY
製作委員会のまとめ役(製作幹事)はQTORY inc.。ちいかわなどのキャラクターを手がけるスパイラルキュートと、『すずめの戸締まり』などを手がけた STORY inc. の合弁会社。委員会の会社と割合は公表されていない。(映画ちいかわ公式サイト・STORY inc.)
まとめ役は、ナガノ先生でも出版社でもなく、ちいかわのキャラクターを手がける会社の側でした。ナガノ先生が委員会に入っているかは、分からないまま。中身が公表されていないのは、もどかしいところです。
原作者には、どんな形でお金が入る?
委員会の外にいるかもしれない原作者には、どうやってお金が入るのか。ここが、いちばん知りたかったところです。
原作者は、原作を「使っていいよ」と許可する側
原作者か、権利を管理する出版社が、製作委員会に原作の利用を許可し、その代わりに原作使用料を受け取る。できた映画の権利は、製作委員会の会社どうしで持ち合う。(公正取引委員会)
映画の権利は、原作者のものじゃないんだ、というのは意外でした。許可を出すのが出版社のこともある。じゃあ、原作使用料っていくらくらいなんだろう?
テルマエ・ロマエは興行収入59.8億円で、原作使用料は約100万円
原作者のヤマザキマリ先生が、2013年2月のテレビ番組で話した金額(当時の報道では、興行収入は58億円)。映画を作る側と直接契約していたのは、原作者ではなく出版社。(ITmedia・J-CAST・映画.com)
約60億円のヒットでも、原作者に届いたのは約100万円。これには正直、強い怒りを感じました。作家さんへのリスペクトがなさすぎる・・・。きっと「先生、これで単行本が売れますから」みたいな決まり文句で、丸め込まれてきたんじゃないか。

安くなるわけは、コケるリスクと宣伝
作る側には「コケる」リスクがあり、原作料は安くしておきたい(記者の説明)。佐藤秀峰先生は2011年9月、出版社が「例え原作使用料が安くても、映像化が宣伝になり、単行本の売り上げが伸びるので、損を飲んで得を獲れ」的なことを漫画家に言う、とツイッターに書いていた。(J-CAST)
思った通りでした。でも、どんな理由があっても、この差を正当化できるとは思えません。
海猿は70億円のヒットで、原作使用料は200万円ちょっと
佐藤秀峰先生の言葉は「どんなに興行収入が上がっても固定。」。自分で交渉して、映画の3作目からは10倍以上になった。(ウレぴあ総研)
交渉したら、10倍以上。出版社まかせとの差がすごい。わたしは、原作使用料は売り上げの何パーセントという形にするのがいいと思っています。人気が出なくて売れなければ、作家さんに入らなくても納得できますから。
ナガノ先生は、出版社を通さずに権利を持っている?
ここで、ナガノ先生の話に戻ります。ちいかわの連載はXのポストで、出版社は本を出している側。出版社は、本を出すことだけをやらせてもらっている感じなのかな?
ちいかわは2020年1月、Twitter(今のX)で連載スタート
単行本は2021年2月12日から講談社。その直前、2021年2月10日発売の『モーニング』(講談社)にも読み切りがのった。(KAI-YOU・講談社)
モーニングにのっていたのは、記憶どおり! でもそれは特別なときだけで、基本はXのポスト。わたしも含めて、ファンはみんなXの更新を待っています。ちいかわでは、出版社はあとから来たほうなんですね。

映画では、ナガノ先生が原作と脚本の両方
権利の表記は「©ナガノ / 2026「映画ちいかわ」製作委員会」。原作の利用を許可したのがナガノ先生か出版社かは、公表されていない。(映画ちいかわ公式サイト)
契約がどちらのルートなのかまでは、表に出ていません。それでも、わたしはナガノ先生がかなり自分主導でやっている気がします。たしか前に、自分ツッコミくまのことで何かあったはず・・・。
自分ツッコミくまは、「ナガノのくま」の名前で出ていた時期がある
2014年にナガノ先生がLINEスタンプとして作ったキャラクター。当時は商標を前にいた会社が持っていて、2024年1月にナガノ先生の会社へ移った、というファンの調べを伝える記事もある。いきさつは公表されていない。(ナガノ先生の寄稿ほか)
その経験もあって、ちいかわでは権利のことを、できる限り自分でコントロールできるようにしているんじゃないか。これは、わたしの想像です。同じことがちいかわで起きなくて、本当によかった。
映画とグッズ、原作者に入るのはどっち?
最後に、映画とグッズ。原作者に入るのは、どっちのほうが大きいんだろう?
グッズは、売れた額の割合で受け取るのが一般的
売れた額に決まった割合をかけたお金(ロイヤリティ)を、権利を持つ側が受け取る形が一般的とされる。ちいかわのグッズで、だれがどれだけ受け取っているかは見つからなかった。(ライセンスの解説記事)
決まった額のこともある映画に対して、グッズは売れるほど増えるしくみ。入り方が、そもそもちがうんですね。

では、ちいかわのグッズは、どれくらい売れているのか。
ちいかわのコラボの店は、上海で3日間に約1億6,000万円
2024年に名創優品(MINISO)が上海で期間限定で開いた、ちいかわとのコラボの店で、3日間に800万元(約1億6,000万円)を売り上げた。(PRESIDENT Online)
グッズが売れるほど入るなら、ちいかわは、こっちのほうが大きそう。これも、わたしの想像ですけど。決まった額の映画と、売れるほど増えるグッズ。同じ「原作者に入るお金」でも、中身はまったくちがいました。
186.6億円のうち、ナガノ先生にいくら入ったのかは、最後まで分かりませんでした。でも、半分は映画館、残りは配給会社と製作委員会、原作者にはその外から原作使用料。人に聞かれたら、まずはこう話せそうです!
